AIと自動化は、広告運用をかつてないスピードへ押し上げました。メディアはより「スマート」に、バイイングはより「効率的」に。しかし、その一方でマーケターの現場には、ある切実な課題が浮上しています。
「指先で弾き飛ばされる広告が、全く人の心に残っていない」
デジタル広告がアルゴリズムで人々を「追跡」し一瞬で消費される現代。共有された物理空間に存在する交通広告・屋外広告(OOH)の価値は、いま全く異なる次元で再定義されています。広告の新指標でもある「Attention」は取引されるものではなく、存在感・スケール・文脈によって「獲得」されるもの。この本質的な違いが、今、米国で再評価されているのです。

なぜ今、OOHの「再定義」が必要だったのか
OOHは強力ですが、あまりにも多種多様です。看板、交通広告、街頭ビジョン、コンビニやエレベーターのサイネージ……。このフォーマットの幅広さが、逆に「OOHとは何か」という共通理解を断片化させていました。
そこでOAAAは、個別の媒体説明を越えた、業界横断のOOH再定義を策定しました。それが、OOHを「Human Medium(ヒューマン・メディア)」として位置づける戦略です。
OOH is the Human Medium. Why that matters in 2026
https://oaaa.org/blog-posts/ooh-is-the-human-medium-why-that-matters-in-2026/

コンセプト:OOHは「Human Medium」である
OAAAが提示するこの定義は、デジタルメディアとの明確な「設計の違い」に基づいています。
- 生活の鼓動(Beat)に刻まれる: 移動・買い物・体験という、生活者のリアルなリズムの中に存在する。
- 「共有体験」の創出: 個人の画面で完結せず、同じ空間にいる他者と同じものを見る。
- 3つの「Un(不可)」: スクロールできず(Unscrollable)、スキップできず(Unskippable)、ブロックできない(Unblockable)。
- 「出会い」の設計: 広告が人を追いかけるのではなく、アイデアがその場所で人を待ち受け、出会う。
OOHを「コア・バイ」にする5つの価値
OAAAは「Human Medium」という概念を、5つのコアバリューで整理しています。
・Uniquely Creative
物理的な制約があるからこそ、アイデアは「一撃」で伝わるほど研ぎ澄まされる
・Powerfully Amplifying
OOHは他チャネルの「増幅器」。SNSシェアやモバイル検索の起点となる
・Deeply Relevant
店に向かう途中、イベント会場など、消費者の「意図」が立ち上がる瞬間に立ち会える
・Intelligently Connected
テクノロジーがアイデアを加速させる
・Authentically Human
公共の場に存在するからこそ、ブランドは「本物らしさ」と「信頼」をまとう
データが証明する「人を動かす力」
“Human Medium”は、単なるキャッチコピーではなく、OAAAの各種調査がその有効性を裏付けています。
- 圧倒的な気づき: 米国の成人の約90%がOOHに気づいている
- スマホ行動の誘発: OOH接触者の76%がスマホで何らかの行動を起こし、51%が検索、43%がオンライン購入に至っている
- Z世代への訴求力: 特に18–34歳の若年層において、広告接触後のアクション率が高い傾向にある
つまりOOHは、単に「見られる」メディアではなく、検索・来店・購入を引き起こす「導線装置」なのです。
結論:広告の未来はAI、ブランドの未来は「人」
OAAAは、2026年を見据えたメッセージとして、象徴的な言葉を掲げています。
"The future of advertising will be shaped by AI. The future of brands will still be shaped by people."
(広告の未来はAIが形作る。しかし、ブランドの未来は依然として人々が形作るものである)
AIが広告を効率化すればするほど、ブランドは「人の経験」という手触り感に戻る必要があります。そのとき、生活者の現実世界にブランドを力強く着地させられる唯一のメディアが、OOHです。
AI時代のマーケティングにおいて、OOHは広告主の意思決定を動かす最大の武器になるはずです。



