2025年9月25日、英国マンチェスターで開催された The Future of Media において、広告効果研究の第一人者Peter Field氏、アテンション計測のLumen社、そして英国ニュース業界団体Newsworksが共同で新調査を発表しました。
High-attention media is more profitable, finds Peter Field, Lumen and Newsworks
本研究は、広告主やメディアプランナーに「広告費の投資配分は高アテンション媒体に向かっているのか、それとも低アテンション媒体に偏っているのか」という問題提起になっています。
■調査結果の概要
本調査では、媒体を「高アテンション」と「低アテンション」に二分して比較を行っています。
- ブランド効果:高アテンション媒体プランは+17%向上
- 市場シェア:+12%増加
- 投資効率:投下資本あたりの“attentive seconds”は+58%
- 投資配分の逆転:2015年は高アテンション媒体68%/低アテンション媒体32%だったものが、現在は逆転
Peter Field氏はこれを「astonishing absurdity(驚くべき不条理)」と表現しています。
媒体区分(Lumen社の定義)
- 高アテンション媒体:ニュース、TV、ラジオ、雑誌、シネマ
- 低アテンション媒体:OOH、ソーシャル、ピュアプレイ型インターネット広告(検索広告・ダイレクトメールを除く一般的なウェブ/アプリ/SNS広告)
特に、ニュースブランドのサイト内広告は非ニュースサイトに比べ +40%高いアテンション を獲得すると報告されています。
■業界の反応と論点
賛同の声
- WARC:「ニュースブランドのハロー効果は過小評価されている」【2025/9/25】
- Sounds Profitable:「投資配分の歪みを是正すべき」と指摘【 2025/9/27】
批判・再考を促す視点
- バイアス懸念:Newsworksが共催しているため、ニュースブランドに有利な定義ではないかという声
- OOH一括り問題:Ocean Outdoor × Lumenの別調査では「プレミアムDOOHはオンライン広告の5倍のアテンション」との結果。OOHを一律に低アテンションとするのは不適切との反論
- クリエイティブとの相互作用:Karen Nelson-Field氏(Amplified Intelligence)は「高感情クリエイティブは高アテンション環境で効果が跳ね上がる」と指摘。媒体だけでなくクリエイティブ条件を考慮すべきとの意見
■日本市場への示唆
(1) 「量」から「質」へ
従来の「インプレッション中心のKPI」から、「アテンション獲得効率」へと評価軸を移す必要があります。
(2) OOHの再定義
英国調査ではOOHが「低アテンション」に分類されましたが、駅サイネージや大型ビジョンなど、日本特有のOOH環境は、視距離・滞在時間・視認角度といった条件によって「高アテンション」に近づく可能性があります。
(3) クリエイティブの重要性
「媒体の持つアテンション特性 × クリエイティブの訴求力」の組み合わせが、最終的な広告効果を生み出します。媒体だけでは語れない構造です。
(4) 新KPIの導入
「視認(Visibility)→アテンション→記憶→行動」という階段を明示化し、“attentive seconds per cost” のような横断的指標で評価できる仕組みが、日本の業界においても急務です。
■大阪メトロアドエラのアテンション調査事例
大阪メトロアドエラでは、駅構内や車内デジタルサイネージにおけるアテンション計測を、アイトラッキングおよびサリエンシーマップ解析を用いて実施しています。
- 視線キャプチャ調査:通行者や乗客が広告を何秒注視したか(アテンションタイム)を計測
- サリエンシー解析:広告動画内で視線を強く引きつけた要素をマップ化
- 算出指標:アテンション率(Attention Rate)、平均視聴秒数、視認率(Visibility Rate)を統合的に評価
日本の調査事例では「OOHも条件次第で高アテンション領域に位置づけ可能」であることを立証しています。
今後は「媒体横断でのアテンション比較」と「クリエイティブ条件を加味した効果推定」を組み合わせることが、広告主・代理店・媒体社にとって共通指標となりそうです。