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米MRCがOOH広告の「オーディエンス測定」基準(ドラフト版)を発表

2025728日、米国のMedia Rating CouncilMRC)は、「OOH Measurement Standards – Phase 2: Audience(パブリックコメント版)」を公開しました。

本ブログでは、2024年に発表されたPhase 1への批判を振り返りながら、Phase 2が何を変えたのか、そしてOOH広告の評価軸がアテンションへと本格的にシフトする背景と意義を解説します。

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■なぜ「Phase 2」が必要だったのか?

2024年に発表されたPhase 1では、OOH広告の測定指標が「OTSOpportunity to See/視認機会)」に限定されており、実際に広告が見られたかどうかは評価されていませんでした。
これに対し、米国や英国のOOH業界からは以下のような懸念が寄せられていました。

  • OTS依存の限界:単に「視界に入る可能性があった」という指標では、広告の効果や注視行動は把握できない
  • 国際基準との乖離WOOWorld Out of Home Organization)が策定したグローバルガイドラインに反している
  • 業界内合意の欠如:透明性に乏しく、メディア・広告主・代理店間の共通理解が得られにくい

今回のPhase2では、MRCはこうした批判も受けて「OOH広告のオーディエンス」を明確に定義し直し、ドラフトを公開、パブリックコメントを受け付けています。

■MRCが示す最終ゴール:OOHをクロスメディア評価の中へ

Phase 2の本質は、「OOH広告における接触を、テレビやデジタルと同様に取引可能なオーディエンスとして定量化し、共通言語化する」ことにあります。

MRCが示す評価の階層構造は以下の通りです004

■オーディエンスベースでの指標定義

Phase 2では、以下のようにAudience Impressionsを基準にメディア指標を再定義しています。

  • Reach:一定期間内に広告に接触したユニーク人数(例:週次リーチ)
  • Frequency:接触者1人あたりの平均接触回数
  • GRPReach × Frequency(※Audienceベースの指標に限る)

LTSOTSなどを基準に算出された値は補足情報(参考値)として扱うべきとされています。

■OOH広告測定における5つの重要な考慮点

MRCは、OOH広告に特有の測定上の留意点として、次の5点を挙げています。

  1. 1対多数の特性OOHは「1人のユーザーに1広告」ではなく、「1広告が多数に同時に表示される」ため、個人ベースの測定モデルとは異なる設計が必要
  2. VACEyes Onの活用と限界:既存のLTS指標(VACなど)は活用可能だが、Audienceとの混同はNG
  3. デジタル連携の注意:モバイルデータや位置情報などの補完的データは、オーディエンスや接触と同義ではない
  4. 技術革新の取り込みAIなどの新技術により、LTSからAudienceへのブリッジが可能になる
  5. 多様なOOHフォーマット:空港・駅・観光地など、表示環境の多様性に応じたモデル構築が必要

なお、IAB/MRC20255月に発表したAttention Measurement Guidelines(ドラフト版)では、広告接触を以下のように再構築しています:

  • Attention Metrics(アテンション指標)は、表示時間だけでなく、視線の存在、滞留時間、スクロール速度などを組み合わせて評価
  • OOHTV、デジタルなどメディア横断で「実際に見られたか?」を定量化する方向に進化中

OOHもこのアテンション計測の流れに組み込まれる形で、MRCPhase 2を設計しています。

■日本のOOH業界が今、取り組むべきこと

今回のPhase 2は米国の基準であり、まだドラフトではありますが、OOHの信頼性を国際水準で担保し、クロスメディアでの評価を可能にする変革と捉えると、日本のOOH業界にも以下の対応が求められると思います。

  • VACに加え、アテンションを捉える新たな測定技術の導入(例:AI予測)
  • 媒体社・広告主・代理店間での“指標リテラシー”の底上げ
  • 他メディアとの比較可能性を意識した共通指標への移行

「表示された広告」ではなく、「実際に見られた広告」こそが、これからのOOH広告の価値を証明するスタンダードになるのです。

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