「この広告、いったいどれだけの人が “ちゃんと見て” くれたのか?」
広告を出すすべての企業が抱くこの疑問に、今あらためて注目が集まっています。
近年、世界の広告業界では「アテンション(Attention)」指標・計測というキーワードが、広告効果を測る上で中心的な概念になりつつあります。
このブログでは、広告評価のアテンションとは何か? なぜ今それが重要なのか? そして、OOH広告にもどんな影響を与えているのか? できるだけシンプルに解説します。
なぜ「アテンション」が注目されているのか?
これまで広告の効果は、「インプレッション」や「リーチ」といった指標で測られてきました。
しかし現代は、スマートフォンでの高速スクロール、街中の情報過多といった広告が表示されても見られない環境が当たり前になっています。
たとえば――
- デジタル広告が画面の端に一瞬でも表示されれば「1インプレッション」
- 電車の中でスマホに夢中な人がいても、車内ビジョン広告は「表示された」とカウントされる
……こうした実態を見れば、「表示された=見られた」とは限らないことは明らかです。
そこでいま、注目されているのが「どのくらい注目されたか=アテンション」なのです。
🎯 アテンションの段階と主要指標
アテンションには深さがあります。単に“見た”だけでなく、“どこを・どのくらい・どう理解されたか”を段階的に捉える必要があります。
下の4コマ漫画はChatGPTでアテンションの段階を表現したものです。
① アテンションキャプチャ(視線キャプチャ / Eyes-Captured)
・広告に視線が一瞬でも向いたかどうか
・【対応指標】:アイズオン(Eyes-On)
→ インプレッションの中で、実際に視線が向けられた割合
② アテンションフォーカス(視覚的フォーカス / Visual Focus)
・広告内のどこを・どれだけの時間見たのか
・【対応指標】:アテンションタイム(Attention Time)、アテンションレイト
→ 視線が広告にとどまった平均時間、および平均以上見た人の割合
③ アテンションプロセス(認知的注目 / Cognitive Attention)
・視覚情報が脳で処理され、理解・記憶されたか
・【対応指標】:記憶定着率、感情反応
→ 広告がもたらした理解・記憶・感情の変化を測る
🚉 OOHでも「アテンション」で価値を語る時代へ
これまでOOH広告では、「見た可能性のある人数(OTS = Opportunity to See)」という考え方が主流でした。
最近では、そこに実際に視線が向いた人の推計として「VAC(Visibility Adjusted Contacts)」という概念も使われ始めています。
しかしVACもあくまで「一瞬でもOOH媒体を見たかもしれない」という段階。
これからはさらにその先の、広告をどれだけ長く見たか(Attention Time)という行動と理解の深さに踏み込んだ評価が求められるようになりそうです。
◆ なぜ「アテンションタイム」が特に重要なのか?
人は、1秒未満の視認では情報を十分に理解できません。
「何秒間見られたか」は、その広告が本当に伝わったかどうかを測る第一関門です。
OOHでは、通行中の一瞬の接触がほとんど。
だからこそ、「いかに視線を引きつけ続けられるか」が重要になります。
環境に応じたビジュアル・クリエイティブの最適化などでアテンションタイムは改善可能な指標でもあります。クリエイティブのPDCAにとって、非常に有効な視点となるでしょう。
アテンションが拓く、OOH広告の新たな価値
広告のアテンションという考え方は、OOHをはじめとしたメディアの価値を“量から質へ”と進化させる鍵になり得ます。
OOHはデータ化が難しい媒体と思われがちでしたが、いまや視線追跡や生成AI、サリエンシー分析などの技術により、アテンションの可視化が進んでいます。
この流れにいち早く対応することが、広告主・媒体社・クリエイターのすべてにとって新たなチャンスになるはずです。