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「アテンション・メジャメント」国際レポートの要点 〜テレビ、デジタル、そしてOOHの広告価値を“本当に見られたか”で再定義する

広告が「本当に見られているか?」
いま世界の広告業界が、この問いに真剣に向き合い始めています。

欧州を拠点に活動する放送広告推進団体 Screenforce Finland が発表したAttention measurement: An international status reportは、「広告がどれだけ注目されたか=アテンション」を広告評価の新たな軸と捉える世界的な潮流と課題をまとめたレポートです。

screenforce広告が「見られている」とは、どういう状態を指すのでしょうか? インプレッション数や視認率(Viewability)は、広告が表示されたかどうかは教えてくれますが、実際に人の注意を引いたのか、何秒見られたのかまでは分かりません。

本ブログでは『Attention measurement: An international status report』をもとに、
OOH
(交通広告・屋外広告)も含めた広告メディアの未来にとって「アテンション指標」が何を意味するのか解説します。

■広告効果測定は「アテンションを測る時代」へ

Screenforceのレポートには、世界の広告測定・実務の第一線で活躍する5名の専門家(Amplified Intelligence, Mars, WFA, Havas Mediaなど)が登場し、以下のような認識を示しています。

  • アテンションは単なる表示実際の関与のギャップを埋める指標である
  • 広告の成果(ブランドリフト・購入意欲・ROI)とアテンションは高い相関がある
  • アイ・トラッキング、ハイブリッド測定、AI予測など、技術も進化している
  • アテンションは「万能指標」ではなく、従来のKPIと補完して活用すべき

 

■「アテンション」とは何を意味するのか?

アテンションを次のように定義している専門家もいます。

種類

定義

アクティブ・アテンション

視聴者が広告に完全に注意を向けている状態

パッシブ・アテンション

視界には入っているが意識は別に向いている状態

たとえば、地下鉄駅や車内で交通広告を「何気なく見る」行為はパッシブかもしれませんが、ブランド認知には効果があると指摘されています。

●OOHにおける示唆

  • アクティブ・アテンションが得にくいOOHでは、パッシブ・アテンションの蓄積が重要
  • 「ながら視聴」「移動中の注視」など、OOHならではの環境特性に応じた測定軸が必要
  • “見られた広告秒数”が測れれば、媒体価値の新たな提示が可能に

 

■どのように測るのか? 測定手法の比較

Screenforceのレポートで紹介されている主要な測定方法は以下の通りです。

測定手法

特徴

アイ・トラッキング

視線の動きと滞留時間を測定

ハイブリッドモデル

視線+環境要因(距離、音声、配置 等)

GSR/脳波測定

無意識下の反応を可視化(実験的段階)

AI予測モデル

クリエイティブ段階から注視予測が可能

OOHの現場では、仮想空間でのアイ・トラッキングや、AI(機械学習モデル)のサリエンシー解析によるアテンション予測が実用段階に入っています。

■テレビとデジタルの中で、OOHはどう位置づけられるか?

Screenforceレポートでは、テレビとデジタルを以下のように評価しています。

  • テレビ:長時間の感情的関与を生み出す“持続型アテンション”が得意
  • デジタル:断片的・短期的な“瞬間アテンション”に最適
  • アテンション指標は、両者の比較・統合に活用できる“共通通貨”である

ここに、OOHが新たに加わる余地があると考えられます。

●OOHの可能性

  • 交通広告や街頭ビジョンなど、“ながら注視”される環境が多い
  • クリエイティブ+設置環境をアテンション指標で改善できる
  • インプレッションの代替ではなく、「実際に見られた価値」を示せる

 

■実務におけるアテンション指標の活用法

Screenforceレポートでは以下の実務活用が紹介されています。

活用領域

活用例

クリエイティブ改善

アテンション分析で「見られていない瞬間」を発見し再構成

メディアバイイング最適化

アテンション効率(コスト/注視秒)で媒体を選定

ROI評価

売上・ブランドリフトとの相関を可視化し、価値証明に活用

たとえば、1,000インプレッションで獲得できるアテンション秒数(Attentive Seconds per 1000)を基準に、「媒体ごとの成果の見える化」が進んでいます。

■今後の展望と課題

Screenforceレポートでは、次のような方向性も示唆されています。

  • AIと予測分析で、アテンションを“設計”する時代へ
  • 国際標準と業界標準化(MRC/IAB/ARFによる)が必要
  • ユーザーのプライバシーと倫理的活用の両立が求められる

●OOHにとっての「アテンション」とは

OOH広告は、長年「視認されたはず」でも「本当に見られていたか」は測れなかった領域です。しかし今、アテンション測定技術の進化により、その注目された根拠を示すことが可能となる日が近づいています。

  • 「交通広告は本当に注目されているのか?」
  • 「あのビルボードの広告、何秒見られていたのか?」

それを答えられるようになるのが、このアテンション指標です。

OOHの価値を再定義するためにも、人が目を留めた瞬間を数値化する視点を、日本でも推進すべきではないでしょうか。

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