2024年の日本の広告市場において、OOH(屋外広告+交通広告)は依然としてコロナ前の水準には戻っていないものの、動画広告市場の拡大やデジタルOOHとの連携、リテールメディアのデジタルサイネージの成長といった新たなトレンドが生まれています。
1. 2024年「日本の広告費」の最新動向
総広告費の推移
電通が発表した「2024年 日本の広告費 」によると、2024年の総広告費は前年比 104.9%の7兆6,730億円となり過去最高を更新しています。特に インターネット広告費が前年比109.6%の3兆6,517億円で総広告費に占める構成比は5割に迫り、インターネット広告が市場全体を牽引しています。
OOH広告の推移
電通のデータによると、OOH広告(屋外広告+交通広告)は以下のような推移を示しています。
- OOH広告全体:2019年のピーク時(5281億円)から2020年(4283億円)に大幅減少し、その後緩やかに回復(2023年:4338億円、2024年:4487億円)
- 屋外広告:2024年で2889億円(前年比101.5%、2019年比▲11%)
- 交通広告:2024年で1598億円(前年比108.5%、2019年比▲29%)
2. 成長する動画広告
国内動画広告市場の拡大
サイバーエージェントの「2024年国内動画広告市場調査」によると、2024年の動画広告市場は前年比115.9%の7,249億円、 2028年には1兆1,471億円に達する予測。縦型動画広告は2024年、前年比170.9%の900億円に、2028年には2,088億円に達すると予測されています。特に 縦型動画の需要が急拡大しており、スマートフォンでの視聴に最適化されたコンテンツの増加が見られます。
- 縦型動画広告の主要領域:SNS広告(TikTok、Instagram Reels、YouTube Shorts)が拡大中
- CTV(Connected TV)広告の成長:テレビ視聴のデジタル化が進み、大画面での動画広告の需要が高まる
出典:サイバーエージェント「2024年国内動画広告市場調査」
OOHとの連携の可能性
サイバーエージェントの調査はインターネット動画広告に関するものであり、デジタルOOHは対象外ですが、縦長動画のフォーマットがデジタルOOHにも活用されることも増加しており、SNSで人気の動画フォーマット をそのままOOH広告として展開することで、広告主の活用の幅が広がると考えられます。また、CTV広告の成長とOOH広告のデジタル化が進むことで、アウトドアと家庭内の視聴環境が連携し、広告キャンペーン全体の効果を最大化する新しい広告戦略が登場する可能性もあります。
3. リテールメディアのデジタルサイネージ市場の成長
リテールメディア広告の拡大
CARTA HOLDINGSの「リテールメディア広告市場調査」によると、リテールメディア広告市場は2024年に4,692億円、2028年には約2.3倍の約1兆845億円と予測されています。店舗事業者が提供するリテールメディア広告需要の高まりにより、 デジタルサイネージ型広告も広告主からの関心が高まっています。
- 成長の要因:ECと実店舗の連携強化、店舗内購買データの活用
- 主要プレイヤー:大手スーパーやコンビニチェーンが積極導入
出典:CARTA HOLDINGS「リテールメディア広告市場調査」
OOHとのシナジー
リテールメディアのデジタルサイネージと、交通広告・屋外広告を組み合わせることで 消費者の購買行動に直結する広告戦略 が可能になります。
- 例:駅のデジタルOOHでプロモーションした商品を、ドラッグストアやスーパーのデジタルサイネージでも展開し、購買促進を狙う。
このような クロスメディア戦略 は、OOH広告の価値をさらに高める重要なポイントとなります。
4. OOH広告の成長戦略:デジタル化とアテンション計測
今後のOOH広告の成長には、デジタル化の推進が不可欠です。
例えば、視認性の高い広告デザインを生成AIで生成、機械学習を活用した配信最適化、アテンション計測による広告効果の可視化など。これらの取り組みによって、OOH広告のROI(投資対効果)を明確にし、広告主の信頼を獲得することが求められます。