米国OOH広告のメジャメント最新動向として、MRC新基準に関する議論を紹介します。
「MRC Out-of-Home Measurement Standards Phase 1 - Exclusive of Audience April 2024 Version 1.0」
米国OOH広告の主要業界団体の紹介
米国のOOH(Out-of-Home)広告に関わる主要な業界団体には、OAAA、Geopath、MRCがあります。これらの団体は、OOH広告の標準化、測定、評価において重要な役割を果たしています。
OAAA(Out of home Advertising Association of America)
OAAAは、1911年に設立され、広告主、広告代理店、メディア企業、関連企業などがメンバーとして参加しています。OAAAは、OOH業界の標準を策定し、法的問題に対処し、業界の教育および研究活動を支援することで、OOH広告の価値を推進しています。
Geopath
Geopathは、OOH広告のオーディエンス計測と分析に特化した非営利団体で、1933年に設立されました。最新技術とデータ分析を活用して、OOH広告の効果を科学的に測定しています。
2024年4月、Geopathの長年のリーダーであるDylan氏が突然退任しました。彼のリーダーシップの下で、Geopathは多くの革新的な測定手法を導入し、OOHメディアの価値を高めるために尽力しました。この突然の辞任は米国のOOH広告業界に影響を与えました。
MRC(Media Rating Council)
MRCは、メディア測定と評価の標準を設定し、監査する独立した業界団体です。1963年に設立され、テレビ、ラジオ、デジタル、OOH広告などの異なるメディアの測定手法を評価し、認証しています。
Geopath Dylan氏の退任と同時に、MRCのOOHメディア測定ワーキンググループは、新しいOOH測定基準「フェーズ1」を発表しました。この新基準はインプレッションのみを扱い、オーディエンスの測定は含まれていません。オーディエンス・メジャメント基準は「フェーズ2」で取り扱われる予定ですが、具体的な時期は未定です。
MRC新基準についての議論と課題
新基準は、WOO(WORLD OUT OF HOME ORGANIZATION)が2022年に発行した「グローバルOOHオーディエンス測定ガイドライン」を採用せず、基本的な「視認機会」(OTS:Opportunity to Contact)データに依存していることが問題視されています。GeopathとDylan氏は、WOOのガイドライン策定に参加していましたが、MRCの新基準はこれらの国際的な標準を無視しています。
1. OTS(視認機会)に依存した基準の問題
MRCの新基準は、OTSのみを基にしており、実際に広告を見た人数やそのアテンションを測定しません。これにより、広告の実際の効果を評価することが難しくなります。
2. グローバル基準との不一致
WOOが策定した「グローバルOOHオーディエンス測定ガイドライン」を無視し、より古い測定方法に逆戻りしているとの批判があります。これは、OOH業界全体の標準化と信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
3. MRC新基準の背景
MRCの新基準が急いで承認された理由として、OAAAの年次会議に合わせたものだという指摘があります。これにより、新基準の詳細な検討が十分に行われず、不完全な形での導入となっています。
広告業界全体のアテンション指標の動向とMRC新基準のフェーズ2とOOH広告におけるアテンション指標の課題
広告業界全体では、インプレッションだけでなく、実際の視聴や注意度を測定するアテンション指標の重要性が高まっています。
アテンション指標は、オーディエンスが広告にどれだけ注意を払ったか、広告を見ている時間や視線の位置などを評価するものです。これに対して、インプレッションは広告が物理的に視界に入る可能性を示す指標であり、実際に視聴者がその広告にどれだけの注意を向けたかまでは測定しません。
日本におけるOOHメジャメントの課題
今回は米国OOH広告のメジャメントに関する動向、新しいMRC基準に関する議論を紹介しました。
日本のOOH広告業界もこれらの動向を注視し、OOH広告の測定手法を確立していくことが重要です。アテンション指標の導入は、インプレッションの先の広告効果を測定し、OOH広告の価値を高めるための重要なステップとなるでしょう。