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Sora2、Veo3、Pika2.2 ... 動画生成AIがOOHの「想像力」を解き放つ:シュールOOH(フェイクOOH)をSora2で作ってみた

作成者: 荒井孝文|Oct 22, 2025 8:00:01 AM

動画生成AIの進化がOOH(屋外広告・交通広告)の概念を拡張する

動画生成AIの進化は驚くべきスピードで加速しています。OpenAIの「Sora2」はもちろん、Googleの「Veo3」や、直感的な操作と高品質で注目を集める「Pika2.2」など、テキストや画像からフォトリアルな映像を数分で生成できるツールの登場は、広告・PR業界に大きな変革をもたらしています。

これらの最新AIは、従来の動画制作の常識を覆し、OOH (Out of Home / 屋外広告・交通広告)の企画・提案にも革新をもたらしています。OOHの「もしも」を瞬時に、かつリアルに可視化できる技術は、広告プランニングの可能性を広げます。

大阪メトロアドエラでは、OpenAI「Sora2」を活用し、現実の街や駅を舞台にしたフェイクOOH(シュールOOH)のモックアップ動画を試作しました。今回は、ハロウィンをテーマにした2つの実験映像をご紹介します。

【実験映像1】新宿西口ビル街編:街がバルーンで染まる夜

高層ビル群に、巨大なハロウィンキャラクターのバルーンが夜空に浮かび上がる――。現実では多大なコストや規制が伴う、あるいは実現不可能なシュールOOHを、生成AIで制作しました。


■制作プロセスとSora2への指示

この動画は、ChatGPT5Sora2を使い、わずか20分ほどで制作されています。

  1. キャラクターデザイン: ChatGPT5でハロウィンキャラクターのバルーン(静止画)を生成
  2. 背景準備: 東京都デジタルツイン3Dビューアから新宿西口の風景を取得
    https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/3dmodel/

  3. 動画生成:
    • 生成したキャラクターのバルーンと背景画像を合成
    • Sora2の「image to video」機能で動画化

静止画とAIで、「もしこの場所で、このビルへマッピングなどで広告を出したらどう見えるか」というアイデアを、即座に、リアルな動きでプロトタイピングできるのが特長です。

●Sora2へのプロンプト抜粋
カメラワークを指示することで、都市のスケール感と幻想的な空気感を同時に表現しています。

  • 映像構成:ビル街を見上げるローポジションから、カメラがゆっくりと上方へティルトアップ
  • 動き:数百体のハロウィンキャラクターのバルーンが空へと舞い上がり、街のスカイラインに散らばっていく
  • 演出:ガラス面に映り込む反射やモーションブラーを加え、夕暮れから夜へと移り変わる暖かな光のトランジションを設定
  • 尺:10秒、ループ再生にも適した自然な構成

【実験映像2】Osaka Metro 中央線 夢洲駅編:駅がハロウィンビジョンに変わる


大阪・関西万博への玄関口として注目を集めた夢洲駅。その広大な構内を舞台に、大階段と壁面が仮想ビジョンとして光り出し、パンプキンやコウモリが飛び出す立体的な演出をAIで生成しました。

■制作プロセスとSora2への指示

実在の駅構内写真にハロウィン装飾を加えた静止画をChatGPT5で作成し、それをSora2の「image to video」でリアルな立体演出へと変換しました。30分ほどで、AIが光の反射や物理的な動きを補完した動画が完成しました。

●Sora2へのプロンプト抜粋

  • 映像構成: 縦型 9:1610秒間のフォトリアルなシネマティックCGI動画
  • 演出: 左壁の巨大なジャック・オー・ランタン型デジタルスクリーンがオレンジ色の光を投げかける。右壁の紫色のスクリーンから、数百匹のコウモリが3Dで飛び出し、階段を対角線上に横切って舞い上がる。同時に、光るパンプキンバルーンが左壁から現れ、床に光を反射させながら浮遊する。
  • カメラ・ライティング: 朝の光と混ざり合うオレンジ&バイオレットのグロー効果、リアルなモーションブラー、被写界深度、レンズフレアを設定。

■動画生成AI時代におけるOOHの可能性:プロトタイピング革命

Sora2Veo3Pika2.2といった高性能な動画生成AIの進化で、これまで専門スキルや数日を要した「イメージ提案用のモック映像制作」が、誰でも数十分で実現可能になりました。

この「プロトタイピング革命」は、OOHの企画・提案そのものを変容させます。

AIによって、OOHの「もしも」を立体的に、かつ短時間で可視化できるようになったことで、広告主・マーケターは次のような問いをすぐに検証できるようになります。

・「もしこの場所で広告を出したらどう見えるか」
・「実際に掲出した広告をCGI動画で付加価値をつけ、SNSにも展開できるか」

OOHは、デジタル動画やSNSを変える起爆剤になり得ます。

AI × OOH × Attention(注目)」の掛け合わせは、OOHを単なる看板ではなく、SNSでも展開できる「コンテンツ」へと昇華させます。

大阪メトロアドエラでは今後も、生成AIを用いたOOHクリエイティブとアテンション測定の融合実験を通じて、広告の新しい価値を探求し、テクノロジーでOOHの「想像力」を拡張していきます。

▼参考ブログ
都市のランドマークを“デジタルキャンバス”にするシュールOOHとは?
リアルとバーチャルの融合:CGIと生成AIが生み出す新たな広告クリエイティブ