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ローリング・ストーンズ新曲MVに学ぶ、「リアル空間×生成AI」が拓く体験型マーケティングの未来


作成者: 荒井孝文|May 25, 2026 5:27:34 AM

およそ3年前のブログで、ザ・ローリング・ストーンズの『AngryMVを題材に、ロサンゼルスのサンセット・ストリップに並ぶビルボードとSNSが連動した、屋外広告メディアの可能性についてご紹介しました。
ローリング・ストーンズの「Angry」MV:OOH広告の魅力とサンセット・ストリップのビルボードの歴史

ストーンズが最新アルバムを発表となれば、今回も最新曲のMVを紹介するしかありません。

AngryMVと同じFrançois Rousselet監督がメガホンをとった最新曲『In The Stars』(20265月リリース)のMVは、「リアルな空間の中で、最先端の生成AI技術がクリエイティブをどう変革するか」という、空間演出とテクノロジーの未来を示す画期的な一作となりました。

 

今回は、ビルボードの枠を飛び出し、熱気あふれる空間そのものをジャックした最新MVの舞台裏から、これからのイベントや空間マーケティングに活かせる「AI活用のヒント」を紐解きます。

1. Angry』の「ビルボード」から、『In The Stars』の「リアル空間」へ

前作『Angry』では、実在するビルボードという「広告の枠組み」の中に過去の映像をデジタル合成し、街をメディア化する手法が採られていました。

一方で、今回の『In The Stars』の舞台は、多数の若きダンサーたちが集う「巨大な倉庫のライブパーティ空間」です。ここで仕掛けられたのは、単なるアーカイブ映像の再生ではなく、「過去の肉体の完全な再創造(AIディエイジング)」でした。

若者たちの熱気あふれるパーティ空間に、1970年代後半(名盤『Tattoo You』の時代)の、ギラギラとした全盛期の姿をしたミック・ジャガーやキース・リチャーズが突如として現れ、最新曲を演奏する――。人気アニメ『サウスパーク』のクリエイターが設立した高度なAI/VFXスタジオ「Deep Voodoo」の技術により、時間軸を完全に超越したイマーシブ(没入型)な空間が作り出されています。

今回のストーンズの試みが過去のAI活用例(未来感の演出)と決定的に違うのは、この「AIによるディエイジングそのもの」が、MVのコア・コンセプト(あらゆる時代や文化が混ざり合うタイムスリップ空間)として過去のストーンズ・現在のストーンズ・仮想的なストーンズを同一空間に重ね堂々と押し出されている点です。

2. 「リアルな空間演出×AI」がもたらす新しいマーケティング価値

このMVの手法は、今後のイベントプロモーションや、体験型空間の演出において、重要な3つの視点を示唆しています。

過去のアセットを「いま」の体験として蘇らせる:
古い映像をモニターに流すだけの「回顧展」ではなく、AIによって過去の象徴的なキャラクターやスターを、現代のリアルなイベント空間に違和感なく出現させ、最新のコンテンツと融合させるという、エモーショナルな体験価値を創出。

ハイブリッド手法による「場の熱量」の維持:
Deep Voodoo
社は、すべてをAI任せにしていません。35mmフィルムで実写撮影された「替え玉(ボディダブル)役者」のリアルな肉体の躍動感やダンスの熱量に、AIのディープフェイクモデルを重ね合わせています。「生身の人間が放つ空間の熱量(リアル)×AI(デジタル)」の組み合わせによるリッチな空間演出。

倫理とリスペクトのバランス:
MV
では、2021年に亡くなった名ドラマー、チャーリー・ワッツをAIでデジタルクローン化しませんでした。技術がどれだけ進化しても、ブランドの歴史や人間への「リスペクト」を忘れない姿勢が、結果としてファンの信頼を生むという、コンテンツ制作の好例と言えます。

3. これからの「体験型メディア×AI」の未来

現代の駅や商業施設などの公共空間は、単に広告を掲出する場所から、五感で楽しむ「体験型メディア」へとシフトしています。AI技術と融合することで、「その場にいる人々の熱量に合わせて、過去と未来を行き来するような没入型のエンターテインメント空間」を創り出すことが可能になりそうです。

80歳を超えてなお、最先端の生成AIを「自分たちの表現を拡張する新しい楽器」として面白がり、堂々と主役に据えたローリング・ストーンズ。彼らの飽くなき冒険心は、メディア・広告ビジネスに携わる者にとっても、「テクノロジーを恐れず、いかにクリエイティブの武器にするか」という大きなインスピレーションを与えてくれます。

【おまけ】歌詞(字幕)の「♪OOH♪」に思わず反応してしまう職業病

最後に、メディアビジネスに携わる人間として、このMVを観ていてどうしてもニヤリとしてしまうポイントをご紹介します。
それは、曲の随所でコーラスとして登場する、印象的な「OOH(ウー)」という歌詞です。
音楽ファンにとっては心地よいメロディですが、どうしても「OOHOut of Home=屋外・交通広告)」の3文字が頭をよぎって離れなくなります。

前作でビルボード(OOH)をハックしたストーンズが、最新曲の歌詞の中で「OOH」を連発している――。この見事な(?)シンクロニシティを見ていると、彼らがストリートやリアルな空間メディアに並々ならぬ愛着を持っている根拠のように思えてなりません。そんな彼らの「OOH愛」に負けないよう、私たちもこれからの空間メディアを盛り上げていきたいものです。

大阪メトロ アドエラでは、OOHと最先端テクノロジーを活用したご提案を行っています。新しいプロモーションのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

参考記事:The Hollywood REPORTER
‘South Park’ Creators’ AI Company Made The Rolling Stones Young Again for “In The Stars” Music Video