ブログ | 株式会社 大阪メトロ アドエラ | ADERA

OOHメジャメント共通指標は透明性と対話が鍵:米国Geopathから学ぶ

作成者: 荒井孝文|Sep 30, 2025 7:14:31 AM

OOH(屋外広告)の効果をどう測るか。
広告主・代理店・媒体社が同じ基準で会話できる「共通指標」をつくることは、日本市場にとっても避けられない課題です。
ただし、制度設計を誤れば「数値がブラックボックス」「一部の大手媒体ばかり優遇」といった不信感を招きかねません。
そのヒントになるのが、米国でOOH測定の共通基盤を担う Geopath(ジオパス) の取り組みです。

1. 米国Geopathで起きていること

GeopathはアメリカのOOH業界で「メディアカレンシー」とされるデータを提供する団体です。
2025925日には、380名以上が参加したタウンホールが開かれ、次のような内容が共有されました。
Geopath Town Hall Sets a Course for the Future

  • 透明性とコミュニケーションを重視
     Geopath幹部は「データの説明責任と透明性」を最優先事項として明言しました。
  • 2025 Planning Datasetの刷新
     10か月以上かけて開発した新データセットには、道路網データの再構築、リーチ&フリークエンシー計算モデルの改良、プレイスベース手法の更新が含まれています。
  • OAAAとの連携プロジェクト
     業界団体OAAAと協力し、OOHをよりデータドリブンな分野へ進化させる取り組みを強化。
  • 質疑応答と双方向性
     参加者からの質問に答え、「業界と共につくる基盤」への姿勢を示しました。

加えて重要なのは、独立系媒体オーナーの懸念と業界論争です。

  • 「データ精度」「更新の頻度」「大手媒体の優遇」といった問題意識が公然と表明され、業界メディアでも議論が広がっています。
    Independent Out of Home Companies Asking for Change at Geopath
  • Geopathは公式ブログやタウンホールを通じて、誤解への反論や透明性強化の姿勢をアピールしています。

これらの流れから、Geopathが「単なるデータ提供機関」から「業界全体を支える共通インフラ」へと役割を拡張しようとしていることが見えてきます。

2. Geopathの変化と論点

Geopathの直近の動向から浮かぶ論点は次の通りです。

  • データ提供から運用支援へ
     数値を提供するだけでなく、教育・説明責任・活用サポートといった運用の質が問われる段階に。
  • 積極的な情報発信
     LinkedInやブログを通じ、刷新データや透明性をアピール。批判にも正面から対応する姿勢。
  • 多様な声との対話
     独立系媒体の「大手偏重」批判に向き合うため、ウェビナーを継続。
  • 未来志向の仕組みづくり
     OAAAとの共同プロジェクトを通じ、OOH全体をデータドリブンに進化させる構想を提示。

3. 日本のOOH業界への示唆

この事例から、日本のOOH業界が学べるポイントは明確です。

(1) ブラックボックスを避ける
・ロジックの開示:「どのデータをどう使ったのか」を公開。
・更新時の説明:数値変動があれば理由を明示。

(2) 大手偏重を防ぐ
・中小・地方媒体の声を組み込む仕組みをつくる。
・委員会に第三者や学術機関を入れて、公平性を担保。

(3) 国際基準に準拠する
・世界的な測定の流れ(OTS LTS/VAC Audience Attention)を意識した整備。

(4) 双方向コミュニケーションを常態化
・勉強会を定期開催し、現場の声を吸い上げる。
・説明責任と対話を「制度の一部」と位置づける。

4. まとめ:信頼できるメディアカレンシーを作れるかが分岐点

Geopathの事例は、「ブラックボックス化」や「大手偏重」が現実に起こりうることを示しています。
同時に、透明性強化の姿勢は、信頼を取り戻す可能性も示しています。

日本のOOH業界にとっても、透明性・公正性・国際整合性を柱とした仕組みづくりは必須です。
信頼できる“カレンシーをつくれるかどうかが、OOH広告の未来を大きく左右するでしょう。