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「OOHは成果を生むメディアへ」米国OAAA、豪州OMAのカンファレンスから見るOOHのこれから

作成者: 荒井孝文|May 9, 2025 8:59:47 AM

20255月、OOH(屋外広告・交通広告)業界にとって注目のカンファレンスがアメリカとオーストラリアで開催されました。

  • 🇺🇸 Out of Home Advertising Association of AmericaOAAA
      OOH Media Conference 2025202555日~7日、ボストン)

  • 🇦🇺 Outdoor Media AssociationOMA
     OMA Conference 2025202558日、豪・シドニー)

OOHは今、単なる「アウトドアにある広告」ではありません。
テクノロジーと測定、そして成果へのつながりという観点で、メディアの在り方が大きく変わろうとしています。

本ブログでは、両カンファレンスの内容を米国・豪州メディアやLinkedIn情報をもとに比較し、日本のOOH業界にとってのヒントを整理してみました。

●アメリカとオーストラリア、それぞれのOOH市場規模

国・地域

市場規模(2024年)

特徴

🇺🇸 米国

90億ドル(約1.3兆円)

デジタルOOH比率34%、政治・ローカル広告が成長源

🇦🇺 豪州

11億豪ドル(約1,100億円)

デジタルOOH比率70%、全国測定システムMOVEの刷新を推進

🇯🇵 日本

4500億円

統一的な測定指標は発展途上、都市集中傾向あり

 

🇺🇸 OAAA(米国):OOH成果を生むメディア

OAAAカンファレンスの今年のテーマは「The Power of Presence(存在感の力)」。

ここでいう「存在感」とは、単に「見える場所にある」だけでなく、感情・行動・文化への影響力を持つOOHの強みを再認識するものでした。

注目ポイント:

  • OOH成果型メディアとして再定義
     視認性だけではなく、「見られ、感じられ、影響を与え、行動喚起」が評価指標に
  • 統一戦略「One Voice
     業界全体で共通のメッセージと測定基準を整備し、広告主にとって使いやすいOOH
  • AI・自動化の全面実装へ
     広告配信・測定・分析にAIをフル統合。OAAAは「AIはもはや特別な話題ではなく、前提となっている」と強調
  • 人材育成と多様性
     若手人材への教育、業界の多様性を高め社会に開かれた存在に

🧭 Geopathによる測定信頼性の再構築

米国OOHの測定機関であるGeopathもまた、カンファレンスで再出発を表明。「透明性と信頼性の再構築」を最優先課題とし、以下のような改革を紹介しました。

  • リーチ&フリークエンシーモデルの刷新20256月リリース予定)
     → 高精度な交通・移動データ、最新の道路情報、AIを活用した予測モデルを導入
  • 測定の精緻化
     → 時間帯別の訪問・滞在データをより正確に取得し、施設タイプごとの一貫性も改善
  • 第三者検証の導入
     → 数値の透明性確保のため、外部機関による分析をQ3に実施
  • 中立性と財務健全性の回復
     → 会員への均等なサポートと資金管理を徹底し、OOH測定のカレンシーとしての地位を維持

 

🇦🇺 OMA(オーストラリア):MOVEで「可視性」を再構築

一方、オーストラリアのOMAカンファレンスでは、OOH視聴者測定システム「MOVEModelled Outdoor Visibility and Exposure)」の刷新が発表されました。
このMOVE2026年からの本格運用が予定されており、全国・屋内・地方都市すべてに対応した、科学的かつ全国スケールの測定モデルです。

MOVEの特徴:

2.2百万人の合成人口モデル
 → 実測データ(5,000×14日間の行動記録)に基づき仮想的な移動データを構築
365 × 1時間単位の視認データ
 → 季節・天候・時間帯による違いまで再現可能
・全国180,000ロケーションを網羅
 → 屋外だけでなく、商業施設内や地方都市の屋内もカバー
57種の移動目的分類と個別行動の再現
 → 通勤・余暇・ショッピングなど、行動の背景まで分析対象に

🌍 共通する3つのトレンド

米国とオーストラリア、それぞれ異なる手法を取りつつも、共通して次の3点が強調されています。

  1. 成果主義の強化
     OOHは単なる「見られた」メディアではなく、「人を動かす」メディアに進化
  2. テクノロジーの全面活用
     AI、自動化、そして測定モデルの高度化が進行中
  3. 業界全体の統一戦略(One Voice
     分断をなくし、広告主にとって分かりやすく・使いやすいOOH

🗺 米豪アプローチの違い

観点

🇺🇸 OAAA

🇦🇺 OMA

評価の焦点

成果(行動・売上・ROI

視認性・行動予測の科学的精度

測定の基盤

Geopath:リーチ&フリークエンシーモデルの刷新+第三者検証

MOVE:全国網羅の合成モデリング&実測融合

AI活用

すでに業務統合済み

システム刷新中(2026年運用予定)

 

🇯🇵 日本への示唆

日本のOOH業界にとって、両国の事例は次のアクションを示しています。

測定の信頼性 → 透明性ある第三者測定がなければ、「成果」は語れない

業界横断の統一指標構築へ → 媒体社や広告会社、ベンダーの壁を越えた“共通指標”と“共通言語”が必要 

AI・分析の段階的導入 → 調査や計測、クリエイティブへの活用など、まず“できるところ”から

OOHは「目に入る場所」から、「行動を動かす場所」へ。
そして今、その価値を証明する測定の精度成果が重要となっています。

米国・豪州の事例は、日本のOOH業界にとっても次の選択肢を考えるための重要な指針となるはずです。