2025年5月、OOH(屋外広告・交通広告)業界にとって注目のカンファレンスがアメリカとオーストラリアで開催されました。
OOHは今、単なる「アウトドアにある広告」ではありません。
テクノロジーと測定、そして“成果へのつながり”という観点で、メディアの在り方が大きく変わろうとしています。
本ブログでは、両カンファレンスの内容を米国・豪州メディアやLinkedIn情報をもとに比較し、日本のOOH業界にとってのヒントを整理してみました。
●アメリカとオーストラリア、それぞれのOOH市場規模
国・地域 |
市場規模(2024年) |
特徴 |
🇺🇸 米国 |
約90億ドル(約1.3兆円) |
デジタルOOH比率34%、政治・ローカル広告が成長源 |
🇦🇺 豪州 |
約11億豪ドル(約1,100億円) |
デジタルOOH比率70%、全国測定システムMOVEの刷新を推進 |
🇯🇵 日本 |
約4500億円 |
統一的な測定指標は発展途上、都市集中傾向あり |
🇺🇸 OAAA(米国):OOHを“成果を生むメディア”へ
OAAAカンファレンスの今年のテーマは「The Power of Presence(存在感の力)」。
ここでいう「存在感」とは、単に「見える場所にある」だけでなく、感情・行動・文化への影響力を持つOOHの強みを再認識するものでした。
注目ポイント:
🧭 Geopathによる測定信頼性の再構築
米国OOHの測定機関であるGeopathもまた、カンファレンスで再出発を表明。「透明性と信頼性の再構築」を最優先課題とし、以下のような改革を紹介しました。
🇦🇺 OMA(オーストラリア):MOVEで「可視性」を再構築
一方、オーストラリアのOMAカンファレンスでは、OOH視聴者測定システム「MOVE(Modelled Outdoor Visibility and Exposure)」の刷新が発表されました。
このMOVEは2026年からの本格運用が予定されており、全国・屋内・地方都市すべてに対応した、科学的かつ全国スケールの測定モデルです。
MOVEの特徴:
・2.2百万人の合成人口モデル
→ 実測データ(5,000人×14日間の行動記録)に基づき仮想的な移動データを構築
・365日 × 1時間単位の視認データ
→ 季節・天候・時間帯による違いまで再現可能
・全国180,000ロケーションを網羅
→ 屋外だけでなく、商業施設内や地方都市の屋内もカバー
・57種の移動目的分類と個別行動の再現
→ 通勤・余暇・ショッピングなど、行動の“背景”まで分析対象に
🌍 共通する3つのトレンド
米国とオーストラリア、それぞれ異なる手法を取りつつも、共通して次の3点が強調されています。
🗺 米豪アプローチの違い
観点 |
🇺🇸 OAAA |
🇦🇺 OMA |
評価の焦点 |
成果(行動・売上・ROI) |
視認性・行動予測の科学的精度 |
測定の基盤 |
Geopath:リーチ&フリークエンシーモデルの刷新+第三者検証 |
MOVE:全国網羅の合成モデリング&実測融合 |
AI活用 |
すでに業務統合済み |
システム刷新中(2026年運用予定) |
🇯🇵 日本への示唆
日本のOOH業界にとって、両国の事例は次のアクションを示しています。
✅ 測定の信頼性 → 透明性ある第三者測定がなければ、「成果」は語れない
✅ 業界横断の統一指標構築へ → 媒体社や広告会社、ベンダーの壁を越えた“共通指標”と“共通言語”が必要
✅ AI・分析の段階的導入 → 調査や計測、クリエイティブへの活用など、まず“できるところ”から
OOHは「目に入る場所」から、「行動を動かす場所」へ。
そして今、その価値を証明する“測定の精度”と“成果”が重要となっています。
米国・豪州の事例は、日本のOOH業界にとっても“次の選択肢”を考えるための重要な指針となるはずです。