リテールメディアのIABガイドラインとOOHメディアのMRCガイドラインとの関連性

広告業界において、リテールメディアやOOH（Out of Home）広告の測定基準が進化を遂げています。その中で、IAB（Interactive Advertising Bureau）が発表したインストアリテールメディアのガイドラインと、MRC（Media Rating Council）との共同で策定されたOOHメジャメント基準との関連性は、注目すべきポイントです。

IABリテールメディアのガイドラインとは

IAB EuropeとIAB USが共同で発表したインストアリテールメディアのガイドラインは、リテール環境における広告の測定基準を統一し、広告効果の透明性を高めるための指針です。このガイドラインは、以下のような要素を含んでいます：

1. 店舗内広告ゾーンの分類
   店舗入口、レジエリア、通路など5つのゾーンに分け、それぞれに適した測定基準を設定
2. 広告の視認可能性（Viewability ）
   顧客が広告を視認可能な条件（例: 広告が視界に入り、一定時間以上表示される）を評価
3. 売上データとの連携
   広告が売上に与える影響を測定するため、視認可能性データと売上データを統合
   
   

MRC OOHメジャメント基準とは
（参考ブログ）
・MRCの新OOH計測基準に対する広告業界の反応とアテンション指標の重要性
・IABとMRCは2025年Q1にアテンション計測ガイドラインを共同で発行する予定  〜アテンション計測の最新動向

MRCが策定したOOHメジャメント基準は、OOH広告におけるインプレッションや視認可能性を評価するための指針、屋外広告・交通広告の測定基準です：

1. 視認可能なインプレッション（Viewable Impression）の定義
2. エクスポージャーゾーン（Display Exposure Zone）の設定
3. 階層化された指標体系
   Gross Impressions（総インプレッション）、Viewable Impressions（OTS: Opportunity To See）、Likelihood To See（LTS: 視認可能性の確率）の段階的な評価。
4. 透明性と品質基準の確保
   
   

IABガイドラインとMRC基準の関連性

1. MRC基準を基盤にした拡張

IABのリテールメディアのガイドラインは、MRCが策定したOOHメジャメント基準を基盤とし、リテール環境に適応する形で改良されています。

• 共通点:
  • 視認可能性の測定フレームワークを共有
  • データの透明性と測定方法の標準化を重視
• 拡張点:
  • 店舗内での広告ゾーン（入口、レジエリア、棚など）ごとの測定を導入
  • 滞在時間（Dwell Time）や視認秒数（Viewable Seconds）など、リテール特有の指標を追加
  • 売上リフト（Sales Lift）や新規購入者数など、広告効果を直接的に売上データと連携
    
    

2. リテール環境特有の指標の追加

MRC基準では、屋外広告・交通広告（OOH）におけるインプレッションの測定が主軸ですが、IABガイドラインでは次のようなリテール環境特有の指標が追加されています：

• 滞在時間（Dwell Time）:
  • 顧客が広告表示エリア内で滞在した平均時間を測定
• 売上リフト（Sales Lift）:
  • 広告の視認が売上に与えた影響を評価
• ゾーン別測定:
  • 店舗内の特定ゾーンごとの視認可能性と効果を評価
    
    

3. 視認秒数（Viewable Seconds）の可能性

IABガイドラインでは、MRCの視認可能性基準を基に、「視認秒数」の指標化を示唆しています。これにより、広告がどれだけの時間視認されたかを具体的に評価する道が開かれています。

業界への影響と今後の展望

1. クロスチャネルでの統一基準の重要性

IABとMRCの協力により、デジタルOOH、リテールメディア、オンライン広告など、複数チャネルでの広告測定が一貫性を持つことが可能になっています。これにより、広告主は複数の広告チャネルを統合的に評価できます。

2. 視認秒数の基準化

「視認秒数（Viewable Seconds）」がリテールメディア広告の効果測定における主要指標として採用される可能性があります。これにより、広告の視認データが売上との関連性をより正確に示すことが期待されます。オンライン広告やデジタルOOHとの比較を容易にするため、視認秒数（Viewable Seconds）や視認可能性（Viewability）を標準化する可能性です。

3. データの透明性とプライバシー保護

インストア広告測定では、センサーやアイトラッキング技術が活用されることが多いため、GDPRなどのプライバシー規制への対応が重要です。IABとMRCは、データ収集の透明性を確保しつつ、規制に準拠した基準を策定しています。

IABが発表したリテールメディアのガイドラインと、MRCのOOHメジャメント基準は、広告測定における統一性と透明性を向上させるための重要な取組みです。これらの基準は、リテール環境特有のニーズに対応しつつ、広告効果の測定精度を向上させることで、広告主や業界全体に貢献しています。今後も、クロスチャネルでの統合やアテンション指標の標準化が期待されます。