2025年、広告業界の焦点は「リーチ(到達)」や「インプレッション(表示回数)」から、「アテンション(Attention:注意・視認)」へとシフトしています。これは、「本当に見られた価値(視認価値)」を可視化し、より確かな広告効果を追求する動きが加速しているためです。
OOH(屋外・交通)広告の分野で注目されているのが、英国のOOH測定機関 Route が提示する “Short Attention Snacks” という新しい視点です。
Lots of short attention ‘snacks’ can feed your attention appetite as effectively as a large portion
本ブログでは、この“Short Attention Snacks” が、日本の交通広告(駅・車内)と相性が良い理由を解説します。
1. なぜ今「アテンション」が重要なのか?従来の指標の限界
これまでの広告評価は、広告が「表示された回数」や「どれだけ多くの人に見せる機会があったか」で測られてきました。しかし、多様なメディアがある現代では、「表示された」としても「実際に注意を払って見られた」とは限りません。
アテンション指標は、この「本当に見られた時間や質」を測定することで、広告主にとっての真の価値(視認価値)を明らかにします。
2. Routeの「Short Attention Snacks」モデルとは?
RouteのEuan Mackay 氏が提唱するこのモデルは、広告への注意(Attention)を 「Snacking and Stacking(細かく食べ、積み重ねる)」と捉える考え方です。
これは、スポーツ選手のエネルギー摂取法にヒントを得ています。一度に大量のエネルギーを摂取するのではなく、「少量を高頻度で摂取」することでパフォーマンスを最大化する考え方です。
つまり、重要なのは1回の接触の「長さ」ではなく、累積される「総アテンション時間」であるという点です。
3. 日本の交通広告は「短時間 × 高頻度」の理想環境
日本のOOH市場、特に交通広告(駅・車内)は、この 「短時間 × 高頻度接触」 が日常的に、かつ自然に発生する環境です。
* 駅構内広告:
1回の接触時間は数秒と短いものの、毎日の通勤・通学で同じ導線を通ることで、週に10回以上の自然な接触機会が生まれます。
* 電車内広告:
乗車中、広告は乗客の視界の固定エリアに存在し、視線が自然に往復し、1乗車で数回視界に入ります。
交通広告は、生活者の移動・待ち時間を使い、アテンションを意識せずとも、その接触機会を高頻度に積み上げていく構造のメディアなのです。
4. 研究が示す「累積アテンション」の効果
さまざまな研究結果も、この「短い注意の積み重ね」がブランド効果に直結することを裏付けています。
2024年のHavas × Lumenの共同研究では、ブランドリフト(好意度・購入意向)は接触の長さではなく、「総アテンション(Aggregated Attention Time)」で決まるという結果が出ています。
出典: Havas × Lumen Attention Whitepaper (2024)
2018年のWPP Mediaの研究では、短い注意の積み重ねでも、接触回数が「12回」を超えると、クリエイティブに対する感情反応がピークに達することが確認されています。これは、短時間でも回数の積み重ねがブランド記憶形成に効くことを示しています。
出典: WPP Media / Gorilla In the Room OOH Research (2018
5. 交通広告で「Short Attention Snacks」を最大化するポイント
① 視認時間は1~2秒を前提に設計する
・伝える情報は“瞬時に理解できる”量に絞る
・強いビジュアル、高コントラスト、簡潔コピーが鍵
② 駅×車内の“導線一体設計”で接触を増やす
・駅構内→ホーム→車内まで連続させることで接触回数が倍増し、総アテンションが一気に増える
まとめ:交通広告の価値を「アテンション」で再評価する
Routeの最新知見は、交通広告のメディア価値を「アテンションという新基準」で再評価する重要なヒントを提供しています。
通勤者は毎日同じ場所を通り、同じ広告を短時間ながら何度も視認し、「合計のアテンション」が着実に蓄積されます。そして、この累積された注意量が「ブランド記憶」を強化します。
交通広告は “Short Attention Snacks の理想の環境” と言えるのです。
アテンション×メモリーを軸にしたOOHの価値は、これからますます重要になります。
大阪メトロ アドエラでは、こうした最新知見を取り入れながら、広告主のみなさまのアテンション・メモリー成果の最大化に向けて調査研究を進めていきます。