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OOH広告の価値を「アテンション×AI」で再定義する時代へ ― 効果測定もアンケートも、AIが進化を加速する ―

作成者: 荒井孝文|Oct 17, 2025 8:00:00 AM

OOH(交通・屋外広告)を出稿した際、「本当にターゲットに見られているのだろうか?」「この広告は人々の記憶に残っているのだろうか?」そう感じたことはありませんか。

長らくOOH広告の効果は、インプレッション(露出回数・期間)やリーチ(到達人数)といった量的指標と、掲出後のアンケート調査による想起(Ad Recall)が主な評価手法でした。

しかし、消費者の注意(アテンション)が限られ、情報の洪水が日常化した今、「見られた可能性」だけでは広告の価値を説明しきれません。
世界ではいま、どれだけ注意を獲得し、記憶に残せたかを測るアテンションメトリクスの潮流が加速しています。そして、その中心にあるのがAIです。

なぜ今、「アテンション」がOOHの新たな成長軸なのか

従来KPI(インプレッション/リーチ)の限界
従来のOOH評価は「〇万人が広告を目にした可能性」という推定ベースでした。
しかし、以下のような課題を克服できません。

  • 実際に注視されたかは分からない
  • 周囲環境や注意分散を考慮できない
  • 同じリーチでも、注意の深さによって効果は大きく異なる

いま必要なのは、「量(リーチ)」だけでなく「質(アテンション)」を捉える指標です。

アテンションを構成する主な要素

  • 滞留時間:広告前で足を止めたり、視線を向けた時間
  • 可視性:視界内での見やすさ・他広告との競合度
  • 文脈適合性:時間帯や環境に対する内容の最適化度

これらを複合的に測ることで、広告の見られ方=アテンションの質を定量化できます。

■世界で進む「AI × アテンション計測」の最前線

  • Billups:通行者データ・環境・視覚要素をAIが統合し、広告ごとの「アテンションスコア」を算出
  • OSMOLOC8」:AIと人間の視覚認知モデルを融合し、動画の中で「最も視線を引いた瞬間」を解析
  • 英国調査:プレミアムDOOHは一般オンライン広告の約5倍のアテンションタイムを獲得

これらに共通するのは、AIによる定量的なアテンション可視化によってOOH媒体の価値を再定義している点です。

AIは「アテンション」をどう計測し、最適化するのか

AIによるクリエイティブ最適化

生成AIが複数のクリエイティブ案を生成し、場所・時間帯・通行量・照度などの条件に応じて自動で最適化。たとえば「駅構内で最も視線が止まりやすい色調・動き」をAIが学習し、自動調整します。

AIによる配置・評価の最適化

ロケーション・サイズ・視界条件などを基に、AIが「期待アテンションスコア」を予測し、
媒体の組み合わせや配置を科学的に最適化。従来の経験や勘に頼った出稿から、データに基づく運用設計へ進化しています。

「アンケート」もAIが変える  Ad Recallの限界とパッシブ計測の台頭

On Device社の調査「Brand Lift’s Biggest Mistake」によると、従来の広告想起(Ad Recall)アンケートは信頼性に課題があります。

Ad Recallの構造的リスク

  • 記憶の曖昧さ:見たのに忘れる(False Negative)/見ていないのに見たと思う(False Positive
  • 選択バイアス:既存顧客は「見た」と回答する傾向が3倍以上高い
  • 質問バイアス:「広告を見たか?」という質問自体が意識を誘導し、ブランド好感度を人工的に上げてしまう

つまり、人間の記憶に依存した調査は、過大評価や誤認を含む構造的リスクを抱えています。

次世代の調査は「AIパッシブ計測」へ

今後のアンケートは、視認性・滞留・注視・感情反応などをAIが自動的に解析する仕組みへ進化します。これにより、回答者の主観に頼らない実測型Ad Recall”が可能になります。

AI導入はゴールではない 「実験」から「成果を再現できる運用」へ

AI導入やアテンション計測自体が目的ではありません。大切なのは、効果を再現できる運用設計です。

実践ステップ

  1. 小規模PoCで検証:異なるOOH環境でアテンションスコアを比較し、要因を特定
  2. A/Bテスト:クリエイティブ要素(色・構図・動き)の違いとアテンションの相関を定量化
  3. 最適化ループ:結果を次のクリエイティブ生成・配置設計にAIが自動反映

こうした運用ループが、広告効果の「再現性」と「継続性」を生み出します。

未来のOOHは「成果を証明できるメディア」へ

OOHはもはや感覚経験の領域ではありません。
アテンション×AIによって、OOHは科学的に最適化されるメディアへと進化しています。
大阪メトロアドエラは、OOHにおけるAIアテンション計測の普及を通じて、「広告の価値を可視化し、再現できる未来」をともに創造していきます。

▼参考記事