街を歩けば、駅や電車、街頭ビジョンに自然と目に入るOOH(交通広告/屋外広告)。これまでその価値は、「何人の目に触れたか」「どれだけ多くの人が通ったか」といった“量”で語られてきました。
しかし今、世界の広告業界では広告の価値基準が変わり始めています。
「その広告、本当に“見られて”いますか?」
「その広告に、どれくらい“意識が向けられた”のでしょうか?」
AIで“アテンション”を可視化する実証実験がスタート
大阪メトロアドエラと博報堂DYアウトドアは、地下鉄車内広告を対象に、AIを活用したアテンション(注目)測定の実証実験を行いました。
この実験では、「視線行動の学習」と「画像認識の学習」を統合したサリエンシーモデルというAI技術を用いて、次の2つの新たな指標を導き出しました。
この手法は、これまでのインプレッション数や視認率では測れなかった「注目の質」を可視化するものです。実験では、色・明るさ・動き・構図といったクリエイティブ要素や、環境の違いによってアテンションの強さが大きく変化することも明らかになりました。
世界で加速する「アテンション指標」へのシフト
広告業界では今、「attention(注目)」を広告効果の新たな価値指標として位置づけるパラダイムシフトが進んでいます。
広告リサーチの第一人者であるKaren Nelson-Field氏は、The Drumのインタビューでこう語っています。
「もはや“表示された”だけでは意味がない。ユーザーの行動は、メディアの設計によって決まる。“attention”は広告設計全体に組み込むべきデザイン原則として扱うべきだ。」
この言葉が示すように、「どのようなアテンションを得たいか」から広告設計を始める時代が始まっています。媒体選定、クリエイティブ、配信ロジックも、すべてアテンションを中心に組み立て直す必要があるのです。
さらに、アテンション指標のグローバル基準化の動きも加速中。
AttentionはOOHの「真の価値」を示す次の指標
OOHは、「受動的に触れるメディア」であるがゆえに、移動導線上に自然と存在し、人に発見される力を持っています。
その中で、ただ目に入るだけではなく、しっかりと“意識を向けさせる”工夫が、広告価値を大きく左右します。
今後求められるのは、こんな問いに向き合うことです。
広告は今、“どれだけ深く意識されたか”で評価されるメディアへと進化しようとしています。
私たちは、広告会社と媒体社の垣根を越えた共創によって、「アテンション測定」という新たな挑戦に取り組んでいます。
OOHが「成果を生むメディア」として、次の時代を切り拓いていくために。
🔗関連記事・参考資料:
・ニュースリリース
「そのOOH広告、本当に見られてる?」 ~地下鉄広告の“注目度”をAIで可視化、“注目されるOOH”を共に創る時代へ
ブランド企業がOOH広告で「アテンション」を得るための広告クリエイティブを科学的に調査
・The Drum|Karen Nelson-Field氏インタビュー(2025年)
The (next) attention revolution is here, says Dr Karen Nelson-Field