電通グループの「dentsu Global Ad Spend Forecasts December 2023」、日本の「デジタルサイネージ広告市場の現状と将来予測」に基づく考察
電通グループが12月13日に発表した「世界の広告費成長率予測」によると、2023年の世界の広告費成長率は6月時点予測(3.3%)から下方修正の2.7%に低下しましたが、デジタル広告は全広告支出の57.7%を占め、引き続き強い成長を見せています。下方修正は、不透明な経済状況と消費者行動の変化に起因しています。2024年の世界広告費の成長率予測は4.6%とされています。日本市場に特化してみると、2024年の成長予測は前回予測(3.2%)から0.7pt下方修正した2.5%と予測されています。
▼世界のOOH広告市場:
2024年には、OOH広告市場は4.4%成長し、総額424億ドルに達すると予測されています。これは世界の広告支出の5.6%に相当します。また、2026年までの3年間での平均年間成長率(CAGR)は4.6%の見込みです。デジタル化の進展と新しい技術の導入により、OOH広告が新たな機会を捉えていることを示しています。
・アナログとデジタルOOHのバランス:アナログOOHは今後も重要ですが、デジタルOOHの成長は特に注目に値します。デジタルOOHは、2023年、2024年ともに8.5%の成長が予測されています。オーストラリアやイギリスでは、DOOHが既にアナログOOH支出を上回っており、それぞれ68.1%と64.6%を占めています。
・プログラマティックDOOHの拡大:米国では2023年にDOOH支出の14.0%を占め、更なる成長が予測されています。
▼デジタル広告市場:
2023年の世界のデジタル広告の市場シェアは57.7%で、2024年には6.5%の成長が予測されています。リテールメディア、検索広告、SNS広告などが、デジタル成長の主要な推進力です。
▼米国、英国、日本の広告市場の特徴:
・米国:政治広告の増加やリテールメディアの成長が目立ちます。AIの進化による効果とCTVの増加が顕著となると予測されています。
・英国:OOHとデジタル広告は共に2024年に4.0%成長する見込みで、デジタルは広告支出の70%以上を占め、OOHは2019年の水準を超えています。
・ 日本:デジタル広告が総広告支出の45.8%を占め、検索、ビデオ、SNS広告の期待により5.2%成長となっています。市場シェア23.5%のテレビは、減少傾向からの段階的回復が見込まれ、2024年には安定(-0.2%)を保ち、2025年以降に成長の可能性があります。OOHはコロナ後の回復と3D OOHや大型デジタルOOHなどの成長が期待されています。
米国、英国、日本では、特にデジタルメディアとOOHが重要な成長分野であり、AIなど最新技術を採用していくことが市場を牽引する重要な要素となっているようです。
■日本のデジタルサイネージ広告市場:
電通グループ傘下のCARTA HOLDINGSがとデジタルインファクトが国内広告関連事業者のデータとインタビューに基づく分析・調査した結果「デジタルサイネージ広告市場の現状と将来予測」を12月21日に発表しましたので、交通広告を中心に概要を紹介しておきます。
▼市場規模と予測:
2023年のデジタルサイネージ広告市場規模は801億円で、前年比119%の成長。
2027年には市場規模が1,396億円に達すると予測されており、これは2023年比で174%増です。
▼市場動向:
・新型コロナの影響:新型コロナウイルスの影響を受けながらも市場は回復傾向にあります。
・人気地区のトレンド:特に渋谷、原宿、新宿などの人気地区の屋外や駅構内のデジタルサイネージ広告が人気を博しています。
・リテールメディアの注目:小売店舗におけるデジタルサイネージ広告の開発が注目されています。
・プログラマティックDOOH:プログラマティック広告取引への関心が高まり、デジタルサイネージ広告媒体の取引に特化した技術が導入されています。
・関西地域への期待:2025大阪・関西万博の開催をひかえる関西地域への新規媒体設置に期待もされています。
▼交通広告市場の状況:
・市場規模:2023年で全体の49.8%、399億円。
・市場動向:鉄道車両広告の回復が遅れていますが、外部事業者との連携や広告商品の再設計・販売方法の見直しが進行しています。タクシー広告は首都圏での設置がほぼ完了し、安定した成長が見込まれています。
■戦略的な考慮事項:
・OOH広告とデジタルメディアの組み合わせが、より強力なマーケティング戦略を生み出す可能性があります。
・プログラマティック技術の進化に伴い、OOH広告はより柔軟で効果的な選択肢になりつつあります。
・ブランドは、市場の動向を見極め、OOH広告を適切に活用することが重要です。