メタバースのビジネス利用として、VR環境でのアイトラッキング調査はOOH媒体の視認性を調査するのに役立つことがあります。VRのアイトラッキング調査の特徴として、以下のような点が挙げられます。
大阪メトロアドエラでは、交通広告“駅”媒体の視認性を調査するため、現実環境にありそうなクリエイティブをジェネレーティブAIで作成して、実空間メタバースとも言われるVRでのアイトラッキング調査を実施しました。
VR環境でのアイトラッキング調査は、被験者にVRヘッドセットを着用してもらい、仮想的な駅空間の中で広告がどのように視認されるかを測定するものです。被験者のアイトラッキングをリアルタイムで記録し、データを分析することで、眼球の動きで確実に見たとされるOOH媒体設置環境に反応した調査結果をより正確に得ることができます。
ただし、VR環境では、被験者がVRヘッドセットを着用することによって、現実世界との接続が失われ、現実の環境と比べて行動は異なる可能性があります。
今回の調査では、VR環境内の個人の移動経路を固定し、被験者の没入感を高めるために現実環境にあわせたBGMを調整するなど、調査で得られた知見を現実の世界に適用できるよう工夫しました。調査の参加者にVRが現実環境と比べてどう感じたか尋ねたところ、回答者の大多数は、現実環境と同じかだいたい同じように感じ、5%の回答者だけが現実的でないと考えました。こうした回答は、グローバルOOH業界団体WOO(World Out Of Home Organization)がスポンサーとなり、大手媒体社(JCDecaux、Clear Channel Outdoor、Exterion Media、APG/SGA)が英国、フランス、スイス、スウエーデンで実施した研究プロジェクト「AM4DOOH」とほぼ同様です。
なお、若年層ほどVRを現実的と感じるなど年代による差もありました。
「聞こえてくる音声や環境音が現実そのものでリアルに感じた」
「駅構内の雰囲気が実際の環境と同じようで、地下鉄駅を本当に歩いているようだった」
「人の波が普段利用している駅構内の雰囲気と同じ様に見えた」
「広告がアニメだったり、動物だったりよくありそうなものだった」
「構内のポスターや人の込み具合がリアルだった」
等の反応が多い一方で、
「曲がるときに横歩きしている感じが不自然だと感じた」といったVRで工夫すべき意見もありました。
過去に現実環境で実施したOOH媒体のアイトラッキング調査と同様の結果が、今回のVR環境でも得られたことから、VR環境のアイトラッキングデータを分析することによって、さまざまな媒体設置環境やサイズ、静止画/動画による傾向にも活用できると考えています。
これにより、グローバルOOH業界団体WOO(World Out Of Home Organization) が定義するメディアカレンシー(媒体取引標準価値指標)の「視認調整済みコンタクト:Visibility Adjusted Contact(VAC)」を交通広告の駅媒体で測定することが可能になります。