英国のスーパーマーケット「TESCO」の“ラマダン”ビルボード広告が「The Drum Awards」アウト・オブ・ホームの最優秀賞を受賞しました。
日本の総人口1億2322万人（総務省調査：2022年8月公表）のうちイスラム教徒は推定約20万人と人口の割合は0.2%程に過ぎませんが、英国では総人口6850万人（UNFPA 世界人口白書2022年版）のうちイスラム教徒の人口は約410万人で6%の割合と推定されています。
多様化が進み、イスラム教徒の人口が増加している英国でも、これまで、イスラム教の信仰とイスラム文化、特に断食をおこなうRamadan（ラマダン）について英国民も広告主も理解していなかったそうです。ラマダンは、単に食事を断つだけではなく、イスラム教が採用している大陽歴の第9の月である30日間、さまざまな欲望を抑え、自身の信仰心を深めることが本来の目的だそうです。ラマダン期間中の禁止事項のひとつとして、日の出から日没までの飲食が禁じられています。
イギリスのスーパーマーケット「TESCO」はダイナミックOOHを活用して、日没後まで食事が表示されないビルボード広告を2022年のラマダン期間（4月）に実施しました。
日中はビルボードに4本の手と大量の空の皿が表示され、日没後、イスラム教徒がIftal（イフタール）と呼ばれる食事をとりはじめるタイミングに、皿の上に食べ物が現れます。
このビルボード広告は、ロンドン、バーミンガムなど、イスラム教徒の多い地域で、昼から夜への移り変わりを強調するため、背景に夕日が映る東向きのビルボードに掲出されたそうです。
イギリスでは400万人以上のイスラム教徒がラマダンの期間中、礼拝やお祝いをしますが、英国のメディアでは、ラマダンが誤って報道されたり、ほとんど報道されなかったりすることが多く、英国のイスラム教徒の多くは、自分たちが否定的に描かれることが多いと感じていたようです。スーパーマーケット「TESCO」はイスラム教徒のコミュニティを祝い、支援しながら、非イスラム教徒への啓蒙と意識向上を図るために、「Together this Ramadan」というスローガンと「断食中の皆さんに敬意を表して、このお皿は太陽が沈むときだけいっぱいになります」という説明文を添えたキャンペーンにしました。
イスラム教徒でもある写真家と、フードコンサルタントがクリエイティブに参画した「TESCO」のラマダンに合わせた広告展開は、イスラム教徒、非イスラム教徒から好意的に受け入れられたそうです。